観天望気 [山行]
2018.11.17(土)
東京都山岳連盟主催の観天望気山行に参加しました。
講師は山岳気象予報士の猪熊さんです。
観天望気とは自然現象、多くの場合は雲の様子を観察して、これからの天気を予想することです。天気図は使いません。
行き先は山梨の御坂山塊の竜ヶ岳です。冬季の竜ヶ岳からは富士山頂からの日の出「ダイヤモンド富士」が見えるそうです。
竜ヶ岳の場所を確認しておきます。
竜ヶ岳は本栖湖の南、富士山の北西にあります。
40キロほど南には駿河湾が控えているので、南風が吹くと海からの湿った空気が山の斜面で上昇し、竜ヶ岳は雲に覆われることになります。
次に、当日の地上天気図を確認します。
今日の気圧配置だと、竜ヶ岳(▲印)に対して北寄りの風が吹くことが分かります。
(06:40)新宿駅
下層雲の層積雲が出ています。
6時40分の東京の気温は11.3度でした。
下層に冷たい空気が入ると層積雲が発生します。
さて、バスで首都高4号線を走っていると、北側と南側で雲の出方が違うことに気がつきました。
4号線は都内を概ね東西に走っています。バスは大月方面に西に進んでいるので、走行方向の左側が南側、右側が北側になります。
南側は雲が多く出ています。これは海側から湿った空気が入ってきたためです。
一方、北側にいくほど雲は少なくなります。内陸には海風が届かず、大気が乾燥しているためです。
富士山頂に小さな笠雲(レンズ雲)がかかっています。富士山上空の3千メートルでは風が強いことが分かります。
(09:39)
竜ヶ岳の登山口(ヴィラ本栖)に着きました。
登山口では出発前に、雲の種類と風向きを確認します。
上層の巻雲が少し見られますが、雲量はほとんどありません。風も無風でした。
(10:40)
本栖湖の方面から弱い風が吹いてきました。本栖湖は竜ヶ岳の北にあるので、吹いてきた風は北風です。
北岳、間ノ岳、西農鳥岳がくっきりと見えます。
(10:46)
富士山の裾野に積雲が出てきました。
富士山の25キロ南には駿河湾が広がっています。ここから海風が入ると、富士山の斜面に沿って上昇流が生じて、積雲が発生したものです。
(11:04)
巻雲が増えてきました。上空が湿っているのでしょう。
巻雲は氷晶(ひょうしょう)という細かな氷の結晶でできています。
(11:17)
西湖と城山が見えました。
(11:32)
積雲がさらに大きくなってきました。
日照時間が長くなり地面が温められた結果、暖かい空気が上昇してきたものと思われます。
(11:37)
「あっ、彩雲だ!」の声に空を見上げたら、巻雲の一部が虹色に染まっていました。
彩雲(さいうん)は太陽光が雲で回折されて起こる現象です。
山頂に近づくとスズタケが増えてきました。
「スズタケ」の名称ですが、竹ではなく笹です。
見た目はネマガリタケがなることで有名なチシマザサにそっくりです。
ネットの書き込みによると、スズタケのタケノコもなかなか美味なようです。
(12:15)
東の道志山塊の上空にも積雲が出ています。
これは相模湾からの風によるものだそうです。
北には奥秩父。信濃川沿いの風による積雲が出ています。
(12:55)山頂
山頂はかなり広く平らなので、食事をしたりシートを敷いて横になったりと、ピクニック気分を味わうことができます。
竜ヶ岳山頂から見た富士山は小さな笠雲をかぶっていました。
この日は笠雲が出たり消えたりを繰り返していました。
下山は湖畔登山口に向かう道を使います。
この道は終始樹林の中で展望がないこと、倒木が何箇所があること、そして土の斜面が大きく崩壊したところをトラバースしなくてはならないことから、お勧めはしません。
ヴィラ本栖にピストンするのが楽しいと思います。
「この雲はどうしてできたんだろう?」と考えることは楽しいものです。
私が気象の勉強を始めたのは山歩きがきっかけですが、気象予報自体は机の前で天気図とにらめっこをする作業です。
本当は、山を歩きながらこの先の天気を考えられるようになりたいと思っていました。その意味で、今回の観天望気山行は良い刺激になりました。
これから観天望気をされる方も、気象理論の概要を分かっていると理解度が深まります。
「雲と風を読む」(中村和郎・著、岩波書店、1991年)がお勧めです。
絶版ですが、図書館にはあるはずです。
東京都山岳連盟主催の観天望気山行に参加しました。
講師は山岳気象予報士の猪熊さんです。
観天望気とは自然現象、多くの場合は雲の様子を観察して、これからの天気を予想することです。天気図は使いません。
行き先は山梨の御坂山塊の竜ヶ岳です。冬季の竜ヶ岳からは富士山頂からの日の出「ダイヤモンド富士」が見えるそうです。
出発前の確認
竜ヶ岳の場所を確認しておきます。
竜ヶ岳は本栖湖の南、富士山の北西にあります。
40キロほど南には駿河湾が控えているので、南風が吹くと海からの湿った空気が山の斜面で上昇し、竜ヶ岳は雲に覆われることになります。
次に、当日の地上天気図を確認します。
今日の気圧配置だと、竜ヶ岳(▲印)に対して北寄りの風が吹くことが分かります。
※なぜ「北寄りの風」が吹くのか?
風は気圧の高い方から低い方に吹きます。上の天気図では、気圧は日本海側が高く、太平洋側が低くなっています。
また、理屈上は風は等圧線に対して直角に吹きます。
しかし地球は球体であることと自転していることの影響を受けて、地上では直角よりも時計回りに45〜70度ほど傾いた角度で吹きます。
上の天気図では、理屈上は等圧線に垂直な北西の風になりますが、実際にはこれが時計回りに45〜70度傾いて、北〜北東の風になります。
風は気圧の高い方から低い方に吹きます。上の天気図では、気圧は日本海側が高く、太平洋側が低くなっています。
また、理屈上は風は等圧線に対して直角に吹きます。
しかし地球は球体であることと自転していることの影響を受けて、地上では直角よりも時計回りに45〜70度ほど傾いた角度で吹きます。
上の天気図では、理屈上は等圧線に垂直な北西の風になりますが、実際にはこれが時計回りに45〜70度傾いて、北〜北東の風になります。
観天望気の記録
(06:40)新宿駅
下層雲の層積雲が出ています。
6時40分の東京の気温は11.3度でした。
下層に冷たい空気が入ると層積雲が発生します。
さて、バスで首都高4号線を走っていると、北側と南側で雲の出方が違うことに気がつきました。
4号線は都内を概ね東西に走っています。バスは大月方面に西に進んでいるので、走行方向の左側が南側、右側が北側になります。
南側は雲が多く出ています。これは海側から湿った空気が入ってきたためです。
一方、北側にいくほど雲は少なくなります。内陸には海風が届かず、大気が乾燥しているためです。
※海風とは?
海風(うみかぜ)とは、日中に海から内陸に向かって吹く風のことです。
海面と比べて陸地は温まりやすく、冷えにくい性質を持っています。これは水と陸の比熱の違いによるものです。
日中、陸地では太陽で温められた地表は空気が上昇して気圧が下がるので、相対的に気圧の高い海から陸に向けて風が吹くというわけです。
海風の届く範囲は通常、数十キロ程度と言われています。
海風(うみかぜ)とは、日中に海から内陸に向かって吹く風のことです。
海面と比べて陸地は温まりやすく、冷えにくい性質を持っています。これは水と陸の比熱の違いによるものです。
日中、陸地では太陽で温められた地表は空気が上昇して気圧が下がるので、相対的に気圧の高い海から陸に向けて風が吹くというわけです。
海風の届く範囲は通常、数十キロ程度と言われています。
富士山頂に小さな笠雲(レンズ雲)がかかっています。富士山上空の3千メートルでは風が強いことが分かります。
(09:39)
竜ヶ岳の登山口(ヴィラ本栖)に着きました。
登山口では出発前に、雲の種類と風向きを確認します。
上層の巻雲が少し見られますが、雲量はほとんどありません。風も無風でした。
(10:40)
本栖湖の方面から弱い風が吹いてきました。本栖湖は竜ヶ岳の北にあるので、吹いてきた風は北風です。
北岳、間ノ岳、西農鳥岳がくっきりと見えます。
(10:46)
富士山の裾野に積雲が出てきました。
富士山の25キロ南には駿河湾が広がっています。ここから海風が入ると、富士山の斜面に沿って上昇流が生じて、積雲が発生したものです。
(11:04)
巻雲が増えてきました。上空が湿っているのでしょう。
巻雲は氷晶(ひょうしょう)という細かな氷の結晶でできています。
(11:17)
西湖と城山が見えました。
(11:32)
積雲がさらに大きくなってきました。
日照時間が長くなり地面が温められた結果、暖かい空気が上昇してきたものと思われます。
(11:37)
「あっ、彩雲だ!」の声に空を見上げたら、巻雲の一部が虹色に染まっていました。
彩雲(さいうん)は太陽光が雲で回折されて起こる現象です。
山頂に近づくとスズタケが増えてきました。
「スズタケ」の名称ですが、竹ではなく笹です。
見た目はネマガリタケがなることで有名なチシマザサにそっくりです。
ネットの書き込みによると、スズタケのタケノコもなかなか美味なようです。
(12:15)
東の道志山塊の上空にも積雲が出ています。
これは相模湾からの風によるものだそうです。
北には奥秩父。信濃川沿いの風による積雲が出ています。
(12:55)山頂
山頂はかなり広く平らなので、食事をしたりシートを敷いて横になったりと、ピクニック気分を味わうことができます。
竜ヶ岳山頂から見た富士山は小さな笠雲をかぶっていました。
この日は笠雲が出たり消えたりを繰り返していました。
下山は湖畔登山口に向かう道を使います。
この道は終始樹林の中で展望がないこと、倒木が何箇所があること、そして土の斜面が大きく崩壊したところをトラバースしなくてはならないことから、お勧めはしません。
ヴィラ本栖にピストンするのが楽しいと思います。
感想
「この雲はどうしてできたんだろう?」と考えることは楽しいものです。
私が気象の勉強を始めたのは山歩きがきっかけですが、気象予報自体は机の前で天気図とにらめっこをする作業です。
本当は、山を歩きながらこの先の天気を考えられるようになりたいと思っていました。その意味で、今回の観天望気山行は良い刺激になりました。
これから観天望気をされる方も、気象理論の概要を分かっていると理解度が深まります。
「雲と風を読む」(中村和郎・著、岩波書店、1991年)がお勧めです。
絶版ですが、図書館にはあるはずです。
2018-11-22 11:19
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