樹木観察 [その他]
2016.10.22(土)
樹木を観察する講習会に参加してみました。
欅(ケヤキ)と榎(エノキ)を見分けられますか?
椿(ツバキ)vs 山茶花(サザンカ)はどうですか?
樹木の種別をどうやって区別するのか、そのポイントを教わることができました。
これを知らないと、独りで図鑑と格闘するだけでは、相当な苦労を味わいそうです。
開催場所: 神奈川県立 東高根森林公園(川崎市)
■樹木の特徴の見方
今の時期(晩秋)の樹木は花をつけていないので、花による見分けはできません。
樹木を特定するのに頼ることができるのは、葉と樹皮しかありません。
(枝っぷりで特定できる木もあるようです)
▼葉の特徴
・葉のギザギザ(鋸歯)
鋸歯の大きさ、毛の有無
・葉の形
縦長か丸いか、刃先が尖っているか
・葉のつき方(葉序:ようじょ)
対生(たいせい:1つの節に茎をはさむように2枚の葉がつく)か、
互生(ごせい:1つの節には1枚の葉しかつかない)か
・葉の枚数
単葉か(名称どおり、葉が1枚の葉でできている)か、
複葉(1枚の葉だったものが、進化して数枚の葉に分かれる)か
・葉脈(ようみゃく)の形
三行脈か否か、並行か
葉脈とは葉についている模様のことで、これで栄養分を送っています。
▼樹皮の特徴
・皮の表面
割れ目の有無、表皮が剥がれるかどうか
・皮目(ひもく)
樹皮表面の小さな粒がタテ状か、ヨコ状か
・実
・新芽
■観察した樹木
▼ヒメシャラ(姫沙羅)
・九州南端から太平洋に分布。標高1,000メートル以上にある。
・北は箱根までで、丹沢にはない。里山にはない。
・樹皮はツルツルしている。
・似た木にヒコサンヒメシャラがある。
ヒコサンヒメシャラは幹に黒い筋がある。
分布はヒメシャラと同じだが、丹沢にはある(ヒメシャラは丹沢にない)。
実がたくさんついていました。
▼ヤマボウシ(山法師)
・葉はハナミズキと似ている。
・葉脈は葉先に向かう。脈腋に茶色の毛が生えている。
・複数の枝が幹の同じところから出ている。
樹皮についているシミは地衣類。 ツルツルした樹皮には地衣類がつきやすい。
▼メグスリノキ(目薬の木)
・カエデの仲間。
・葉が向かい合う(対生)。
・一枚の葉が3枚に分かれている(三出複葉:さんしゅつふくよう)。
・葉や葉柄に毛が多い。
▼シラカシ(白樫)
・常緑樹
・落葉するが、一度に全部が落ちることはない
・葉脈が並行
・ドングリが大きい
▼ニシキギ(錦木)
・枝に翼(ヨク)がある
・紅葉する
▼リョウブ(令法)
・標高が高いところにある
▼ロウバイ(蠟梅)
・葉をこすると匂いがする
▼ヤマコウバシ(山香ばし)
・クスノキ科
・葉を揉むと、匂いがある(柑橘系の香り)
・同じクスノキ科のアブラチャン、クロモジも同様に匂いがする
・枯葉が冬も枝に残る
▼コナラ(小楢)
・ドングリのなる木
・標高800メートルまでの里山にある
・それより標高が高い山にあるのはミズナラ
・若い時は、樹皮の表面は割れていない
・表面の割れ目は剥がれない(cf.ミズナラ)
高山で似た木があり、割れ目が剥がれたら、それはミズナラ
・コナラの葉には葉柄があるが、ミズナラにはない
・割れ目の尾根は平らになっている(cf.クヌギ)
・ドングリは小さい
割れ目の尾根は平らになっている。
▼ヒサカキ(非榊)
・サカキの代わりに使われる
・神社にあり、玉串に使われる
・幹はツルツルで、黒い
・サカキは西日本にある
・常緑樹
・雑木林(ぞうきばやし)に多い
▼クヌギ(櫟)
・割れ目は痩せ尾根になっている(cf.コナラ)
・里山にしかない
・薪にするのに良い木(薪炭用)なので、かつてはたくさん植えられた
・山にコナラはあっても、クヌギはない
・ドングリは大きい
・樹皮はコナラと比べると濃い色で、黒っぽい
・葉に芒(のぎ)がある (芒とは針状の毛のこと)
【どんぐり】
・写真の左がコナラ、右がクヌギ
・ドングリの袴(はかま)に特徴がある
・コナラは鱗片(りんぺん)状になっている
・カシのドングリは同心円状になっている
▼ムラサキシキブ(紫式部)
・実も花も紫色
・潅木で、ざらにある
・葉は対正
・新芽に鱗片がない
▼カマツカ(鎌柄)
・葉の鋸歯は小さく、尖っている
・葉先が広い
・白い花、赤い実
・丈夫な木材で、牛を引く鼻輪に使われたことから別名「ウシコロシ」
▼ケヤキ(欅)
・皮目(呼吸をする)が縦を向いている
・根は丸っこい(cf.エノキ)
▼エノキ(榎)
・皮目は縦
・根っこは板根(ばんこん)状(cf.ケヤキ)
根っこは板根状。
▼イヌシデ(犬四手)
・里山に多い
・クヌギと同じように薪炭用
・樹皮に縦筋
・重鋸歯
・アカシデとの区別が難しい
イヌシデは枝と葉に毛があるが、アカシデにはない
シデ(四手)の実。
花と実の形が神社で使われる四手に似ていることから、この名前がつきました。
▼エゴノキ
▼ツバキ(椿)とサザンカ(山茶花)
・写真の左がツバキ、右がサザンカ
・ツバキの葉は毛がなく、サザンカと比べて大きい
・サザンカの葉は毛があり、ツバキと比べて小さい
サザンカ。
▼カエデ(楓)
・「カエルの手」が由来
・葉が奇数に分かれる
・「イロハモミジ」(別名「高雄もみじ」)は葉が5or7に分かれ、鋸歯は荒い
(cf.山ツツジは葉が7or9に分かれる)
・「大モミジ」は鋸歯が細かい
鋸歯が荒いのでイロハモミジ(「イロハ」の由来は「いろはにほへと」が「7」文字だから)
▼アオダモ(青梻)
・野球のバットの素材になる
・地衣類がよくつく
・羽状複葉(3or5or7枚)、進化の過程で1枚の葉が複数に分かれた
▼ナワシログミ(苗代茱萸)
・葉の裏が光っている(リンモウ)
▼トチノキ(栃の木)
・新芽を樹液で守っているため、触ると粘っている
新芽を触ると、アロンアルファが指についたような感じがしました。
▼カヤ(榧)
・イチネンシ(一年枝?)は、葉のついている枝は緑化(リョッカ)せず、茶色い
・葉先は尖っていて痛い
カヤの実?
▼モミ(樅)
・標高800メートルまでにある
・イチネンシも緑化している
・(若い)葉先は割れている
葉先は割れています。
・1,000メートルから上はウラジロモミ、1,500メートルから上はシラビソか大シラビソ
・ウラジロモミは葉の裏が白く、毛がない
▼コウヤマキ(高野槙)
・高野山に生えていた
・葉先は丸く、痛くない
・葉の裏に白っぽい筋がある
葉の表。
葉の裏に筋があります。
▼ツガ(栂)
・緑化していない
・ツガは標高1,500メートルまで、それ以上の高度ではコメツガ
右手に持っているのがツガ、左手がモミです。
▼カラタチ(枸橘)
・温州みかんの台木になる
・尖っていて痛い
▼スダジイ
・葉の裏は茶色いのが特徴
・鋸歯はない
▼クスノキ(樟)
・三行脈
・表の分かれ目にイボがある
・樹皮は割れている
・葉はショウノウの香りがする
▼マユミ(檀)
・赤い実の中も赤い
▼竹(モウソウチクとマダケ)
・モウソウダケは節間が短く、一重の節。太い筍がなる。
・マダケは節が二重。
▼オオシマザクラ(大島桜)
・桜の皮目は横向き
・オオシマザクラは①蜜腺が葉柄の上、②鋸歯が芒上に尖っている、③毛がある、
という特徴がある。
▼ヤマグワ(山桑)
▼ミズナ
・湿地に生育する
・枝が横に広がるのが特徴、離れていてもすぐに分かる
▼ウツギ(卯木)
・枝の中が空洞になっている
ニガキ(苦木)
・羽状複葉
・枝に白い皮目
・枝を噛むと苦い味がする
■後記
・植物の名前なんて、所詮は人がつけたもの。
それを識別できることがえらいのか、あるいは面白いのか? という疑問が
心の中にはあります。
生物の分類体体系は見た目による分類から、DNA情報をもとにした体系化が
進んでいるようです。
今回も「なぜ、この木とあの木が同じ科に属するの?」というケースがありました。
エノキやムクノキはかつてはニレ科でしたが、今はアサ科になっています。
とは言え、自然界の奥深さなのか、なかなかMECEのようにきれいにはいかないようです。
関心のある方は→「APGに基づく植物の新しい分類体系」
・しかし、自然界には不思議な法則が存在するのも事実なんですね。
資料を漁っていたら、「植物にみられる数の不思議」という資料をみつけました。
葉序には数列の規則があるというのです。ナ、なぜ?
あ〜、山をやっていて生物の勉強までしたくなるなんて・・・、山って罪なヤツ。
樹木を観察する講習会に参加してみました。
欅(ケヤキ)と榎(エノキ)を見分けられますか?
椿(ツバキ)vs 山茶花(サザンカ)はどうですか?
樹木の種別をどうやって区別するのか、そのポイントを教わることができました。
これを知らないと、独りで図鑑と格闘するだけでは、相当な苦労を味わいそうです。
開催場所: 神奈川県立 東高根森林公園(川崎市)
■樹木の特徴の見方
今の時期(晩秋)の樹木は花をつけていないので、花による見分けはできません。
樹木を特定するのに頼ることができるのは、葉と樹皮しかありません。
(枝っぷりで特定できる木もあるようです)
▼葉の特徴
・葉のギザギザ(鋸歯)
鋸歯の大きさ、毛の有無
・葉の形
縦長か丸いか、刃先が尖っているか
・葉のつき方(葉序:ようじょ)
対生(たいせい:1つの節に茎をはさむように2枚の葉がつく)か、
互生(ごせい:1つの節には1枚の葉しかつかない)か
・葉の枚数
単葉か(名称どおり、葉が1枚の葉でできている)か、
複葉(1枚の葉だったものが、進化して数枚の葉に分かれる)か
・葉脈(ようみゃく)の形
三行脈か否か、並行か
葉脈とは葉についている模様のことで、これで栄養分を送っています。
▼樹皮の特徴
・皮の表面
割れ目の有無、表皮が剥がれるかどうか
・皮目(ひもく)
樹皮表面の小さな粒がタテ状か、ヨコ状か
・実
・新芽
■観察した樹木
▼ヒメシャラ(姫沙羅)
・九州南端から太平洋に分布。標高1,000メートル以上にある。
・北は箱根までで、丹沢にはない。里山にはない。
・樹皮はツルツルしている。
・似た木にヒコサンヒメシャラがある。
ヒコサンヒメシャラは幹に黒い筋がある。
分布はヒメシャラと同じだが、丹沢にはある(ヒメシャラは丹沢にない)。
実がたくさんついていました。
▼ヤマボウシ(山法師)
・葉はハナミズキと似ている。
・葉脈は葉先に向かう。脈腋に茶色の毛が生えている。
・複数の枝が幹の同じところから出ている。
樹皮についているシミは地衣類。 ツルツルした樹皮には地衣類がつきやすい。
▼メグスリノキ(目薬の木)
・カエデの仲間。
・葉が向かい合う(対生)。
・一枚の葉が3枚に分かれている(三出複葉:さんしゅつふくよう)。
・葉や葉柄に毛が多い。
▼シラカシ(白樫)
・常緑樹
・落葉するが、一度に全部が落ちることはない
・葉脈が並行
・ドングリが大きい
▼ニシキギ(錦木)
・枝に翼(ヨク)がある
・紅葉する
▼リョウブ(令法)
・標高が高いところにある
▼ロウバイ(蠟梅)
・葉をこすると匂いがする
▼ヤマコウバシ(山香ばし)
・クスノキ科
・葉を揉むと、匂いがある(柑橘系の香り)
・同じクスノキ科のアブラチャン、クロモジも同様に匂いがする
・枯葉が冬も枝に残る
▼コナラ(小楢)
・ドングリのなる木
・標高800メートルまでの里山にある
・それより標高が高い山にあるのはミズナラ
・若い時は、樹皮の表面は割れていない
・表面の割れ目は剥がれない(cf.ミズナラ)
高山で似た木があり、割れ目が剥がれたら、それはミズナラ
・コナラの葉には葉柄があるが、ミズナラにはない
・割れ目の尾根は平らになっている(cf.クヌギ)
・ドングリは小さい
割れ目の尾根は平らになっている。
▼ヒサカキ(非榊)
・サカキの代わりに使われる
・神社にあり、玉串に使われる
・幹はツルツルで、黒い
・サカキは西日本にある
・常緑樹
・雑木林(ぞうきばやし)に多い
▼クヌギ(櫟)
・割れ目は痩せ尾根になっている(cf.コナラ)
・里山にしかない
・薪にするのに良い木(薪炭用)なので、かつてはたくさん植えられた
・山にコナラはあっても、クヌギはない
・ドングリは大きい
・樹皮はコナラと比べると濃い色で、黒っぽい
・葉に芒(のぎ)がある (芒とは針状の毛のこと)
【どんぐり】
・写真の左がコナラ、右がクヌギ
・ドングリの袴(はかま)に特徴がある
・コナラは鱗片(りんぺん)状になっている
・カシのドングリは同心円状になっている
▼ムラサキシキブ(紫式部)
・実も花も紫色
・潅木で、ざらにある
・葉は対正
・新芽に鱗片がない
▼カマツカ(鎌柄)
・葉の鋸歯は小さく、尖っている
・葉先が広い
・白い花、赤い実
・丈夫な木材で、牛を引く鼻輪に使われたことから別名「ウシコロシ」
▼ケヤキ(欅)
・皮目(呼吸をする)が縦を向いている
・根は丸っこい(cf.エノキ)
▼エノキ(榎)
・皮目は縦
・根っこは板根(ばんこん)状(cf.ケヤキ)
根っこは板根状。
▼イヌシデ(犬四手)
・里山に多い
・クヌギと同じように薪炭用
・樹皮に縦筋
・重鋸歯
・アカシデとの区別が難しい
イヌシデは枝と葉に毛があるが、アカシデにはない
シデ(四手)の実。
花と実の形が神社で使われる四手に似ていることから、この名前がつきました。
▼エゴノキ
▼ツバキ(椿)とサザンカ(山茶花)
・写真の左がツバキ、右がサザンカ
・ツバキの葉は毛がなく、サザンカと比べて大きい
・サザンカの葉は毛があり、ツバキと比べて小さい
サザンカ。
▼カエデ(楓)
・「カエルの手」が由来
・葉が奇数に分かれる
・「イロハモミジ」(別名「高雄もみじ」)は葉が5or7に分かれ、鋸歯は荒い
(cf.山ツツジは葉が7or9に分かれる)
・「大モミジ」は鋸歯が細かい
鋸歯が荒いのでイロハモミジ(「イロハ」の由来は「いろはにほへと」が「7」文字だから)
▼アオダモ(青梻)
・野球のバットの素材になる
・地衣類がよくつく
・羽状複葉(3or5or7枚)、進化の過程で1枚の葉が複数に分かれた
▼ナワシログミ(苗代茱萸)
・葉の裏が光っている(リンモウ)
▼トチノキ(栃の木)
・新芽を樹液で守っているため、触ると粘っている
新芽を触ると、アロンアルファが指についたような感じがしました。
▼カヤ(榧)
・イチネンシ(一年枝?)は、葉のついている枝は緑化(リョッカ)せず、茶色い
・葉先は尖っていて痛い
カヤの実?
▼モミ(樅)
・標高800メートルまでにある
・イチネンシも緑化している
・(若い)葉先は割れている
葉先は割れています。
・1,000メートルから上はウラジロモミ、1,500メートルから上はシラビソか大シラビソ
・ウラジロモミは葉の裏が白く、毛がない
▼コウヤマキ(高野槙)
・高野山に生えていた
・葉先は丸く、痛くない
・葉の裏に白っぽい筋がある
葉の表。
葉の裏に筋があります。
▼ツガ(栂)
・緑化していない
・ツガは標高1,500メートルまで、それ以上の高度ではコメツガ
右手に持っているのがツガ、左手がモミです。
▼カラタチ(枸橘)
・温州みかんの台木になる
・尖っていて痛い
▼スダジイ
・葉の裏は茶色いのが特徴
・鋸歯はない
▼クスノキ(樟)
・三行脈
・表の分かれ目にイボがある
・樹皮は割れている
・葉はショウノウの香りがする
▼マユミ(檀)
・赤い実の中も赤い
▼竹(モウソウチクとマダケ)
・モウソウダケは節間が短く、一重の節。太い筍がなる。
・マダケは節が二重。
▼オオシマザクラ(大島桜)
・桜の皮目は横向き
・オオシマザクラは①蜜腺が葉柄の上、②鋸歯が芒上に尖っている、③毛がある、
という特徴がある。
▼ヤマグワ(山桑)
▼ミズナ
・湿地に生育する
・枝が横に広がるのが特徴、離れていてもすぐに分かる
▼ウツギ(卯木)
・枝の中が空洞になっている
ニガキ(苦木)
・羽状複葉
・枝に白い皮目
・枝を噛むと苦い味がする
■後記
・植物の名前なんて、所詮は人がつけたもの。
それを識別できることがえらいのか、あるいは面白いのか? という疑問が
心の中にはあります。
生物の分類体体系は見た目による分類から、DNA情報をもとにした体系化が
進んでいるようです。
今回も「なぜ、この木とあの木が同じ科に属するの?」というケースがありました。
エノキやムクノキはかつてはニレ科でしたが、今はアサ科になっています。
とは言え、自然界の奥深さなのか、なかなかMECEのようにきれいにはいかないようです。
関心のある方は→「APGに基づく植物の新しい分類体系」
・しかし、自然界には不思議な法則が存在するのも事実なんですね。
資料を漁っていたら、「植物にみられる数の不思議」という資料をみつけました。
葉序には数列の規則があるというのです。ナ、なぜ?
あ〜、山をやっていて生物の勉強までしたくなるなんて・・・、山って罪なヤツ。
2016-11-03 11:30
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