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ファイブテンはどこへ行くのか? [用品]

2018. 4.29 追加
2018. 5. 1 追加
2018. 7.11 追加
2018. 7.13 更新
2018. 9.25 追加
2018.12.12 追加

愛用しているアプローチシューズ、ファイブテンのCamp4 Mid GTX(以下、キャンプフォー)が傷んできたので、買い換えようと思ってファイブテンのサイトを覗いてみたら驚きました。

アプローチシューズのラインアップが一新されており、キャンプフォーはおろか、アプローチシューズの元祖とも言えるガイドテニーさえも消えてなくなっていたのです。

そして調べてみると、もっとショッキングな事実が判明しました。


ファイブテンとは?


FiveTen_2.png


FiveTen.png


ファイブテンは1985年、チャールズ・コールが創立したアメリカのアウトドア用の靴の専門メーカーです。自身もクライマーであるコールは粘着度の高い独自の「ステルス・ラバー」を開発し、クライミング以外でも多目的利用できるアプローチシューズ「ファイブ・テニー」を売り出します。

ステルス・ラバーを採用したクライミング・シューズは、クライミングの歴史を書き替えていきました。また、張り替え用のラバー(リソール)も流通しており、他社モデルにステルス・ラバーを張り替える人もいるほどです。

同社は靴のかかとにプルタブをつけたり、ダウントウを採用したり、女性用モデルを販売したりと、新しい工夫をもたらしてきました。

ちなみに、運動靴をスニーカーと呼ぶのは、靴底のゴムが歩く際に音を立てずに人に忍び寄る(sneak on)できることからついたとされます。ステルスはそれよりも優れているという意味でつけられたようです。

性能の評価は高いのですが、ソールのすり減りや異常に早いとか、剥がれやすいという評判も多く聞かれます。自分の靴もこんな状態になりました。

IMG_8207.jpg



国内代理店が中止に!


ファイブテンの日本国内における総発売元は、2002年からキャラバン社が担っています。ところが、キャラバンが2018年末でファイブテンの取り扱いから撤退するというのです。

グッぼるというお店のサイトにこの情報が掲載されています。

グッぼる.png

出典:グッぼる

これによると、書面による通知が届いており、

今後の生産予定は未定
在庫限りで今後の代理店展開も未定
製品継続なのか新製品が出るのか未定


だというのです。一大事ではありませんか!

これまでにもこの業界で、国内代理店が変更になるということはありました。しかし、ファイブテンのケースが深刻なのは、この動きがどうも親会社の意向と密接に関係がありそうだということです。

ファイブテンは2011年、アディダス社に買収されました。その後しばらくはファイブテンの運営に大きな変化は見られなかったようですが、徐々にアディダス化を図ってきて2016年あたりから動きが顕著になってきたようです。

ファイブテンからの公式リリースは出ていません。


アプローチシューズの新しいラインアップ


ファイブテンのアプローチシューズのラインアップは、現在「アクセス」と「アッセント」の2モデルのみです。これは米国サイトでも同じです。使っているソールはStealth S1もしくはMi6です。しかしソールパターンを写真で見る限り、キャンプフォーのような深い溝にはなっておらず、ザレた道や泥道でのグリップ力ははるかに劣りそうです。

色合いはカラフルで、デザインもタウンユースを意識しているように思います。

カモシカスポーツのサイトによると、キャンプフォー及びガイドテニーは2015年春にフルリニューアルをしているようです。

PEAKS2017年4月号の「マウンテンギア2017特集」をみると、このキャンプフォーがまだ掲載されています。したがって、これ以降のタイミングで廃番になったものと思われます。


今後のファイブテンはどうなる?


ファイブテンのラインアップの変更はアメリカの掲示板でも話題になり、張り替え用のソールが入手不能になったと報告されています。
(以下、米ファイブテンをFiveTen、海外アディダスをAdidasと表記します。)

現在、FiveTenの海外サイトはFiveTenのオリジナルとは別に、米AdidasとFiveTenの統合サイトが存在しています。そのトップページにはNew Home of Five Tenと書かれています。米国内ではAdidasがFiveTenの独占販売を行なっており、2018年1月頃よりFiveTenの通販サイトを統合したようです。ここには「Adidasは常に商品ラインアップを調整しています」と、気になる記述もあります。

また、この統合サイトには不思議なことに、本家FiveTenサイトから削除されたガイドテニーが掲載されています。

adidas.png


Adidas/アディダスにはTerrexというアウトドア・シューズのブランドがあり、その中にはCamp4 Mid GTXに顔つきのそっくりなモデルがあります(ソールパターンは別物)。

こうした断片的な情報を突合すると、AdidasはFiveTenと競合製品の整理を図っているように思われます。その途上で取り扱い製品や国別の代理店整理の進捗に不整合があるのでは無いでしょうか。

FiveTenは将来的に完全にAdidas/アディダスの一ブランドになるのかもしれません。あるいはTerrexに完全吸収されるのかもしれません。そう考えると、キャラバンが代理店から撤退するのもつじつまが合います。

キャンプフォーは足の幅が広い自分にピッタリだっただけに、購入ができなくなるのは困った事態です。スポルティバやスカルパも良い製品を出しているようですが、自分にとってキャンプフォーには「多くの岩場をこれで歩いてきた」という実績があります。

今のうちにネットで購入できるものはしておきたいと思います。すでに一部サイズは購入できなくなっています。

今回はアプローチシューズに限定して書きました。AdidasはFiveTenのクライミングシューズのラインアップが多すぎると考えているようなので、こちらにも手が入っていく可能性があります。


結論(2018.7.13更新)


ネット情報をあたった結果、個人的見解としては

Five Tenという企業は消滅するも、Adidasの一ブランドとして製品は継続する

という結論に達しました。

参考までに、その主な根拠を並べておきます。

1. Five Ten本社は移転、その後拠点は不明


Five Tenの本社はロサンゼルスの東約百キロにあるRedlandsというところにありました。
ここは同社のアウトレットも併設されていて、かなり好評だったようです。
しかし、同社はここを2017年末で撤退しました。

アウトレットのFacebookには「会社の拠点はすべて別ロケに移転します」とあります。

Five Ten Outlet.png

移転先の情報は見当たりませんでした。

2. 2019年モデルが発表されている


複数の展示会で、Five Tenの新しいモデルが発表されていることが報告されています。

例えば2018年6月、アディダスのお膝元であるドイツで開催されたアウトドア用品の展示会Outdoorでは、2019年モデルとしてFive Tenniesが発表されています。

これは明らかにファイブテン の初期モデル「ファイブテニー」をもじった名称ですね。

この展示会では、フレッド・ニコル(スイス出身の著名クライマー)が2年間開発に関わってきたAleonも発表されています。

3. アディダスとの結びつきは深まっている


展示会OutdoorでFive Tenの展示ブースは「adidas AG - Five Ten」で登録され、アディダスのTERREXと同一ブースになっています(AGとは日本の「株式会社」に相当するドイツの名称です)。

Exhibitor.png

さらに衝撃的(?)なことには、フレッド・ニコルが手にするAleonにはアディダス・ロゴがしっかりと付いていることです。

aleon.png

その他にもホームページの作りとか、細かいことを挙げると色々あります。

最後に


アディダスの傘下にこれだけ取り込まれたということは、Five Tenが消滅しないというある意味では安心材料なのかもしれません。

しかし残念なのは、FIve Tenのアプローチシューズのトレンドがすっかり変わってしまったことです。ミッドカットモデルが全廃されたこと、そしてキャンプフォーで採用されていた溝の深いStealth S1ラバーがなくなってしまったことです。

これがアディダスの戦略によるものなのか、他の事情によるものなのか分かりません。言えることは、現在のFive Tenのアプローチシューズの商品構成は競合他社のものと似通っているということです。

最近のアプローチシューズはどのメーカーもローカットで、ミッドカットを出しているのはラ・スポルティバぐらいです。これだと歩いているときに小石がコロコロと入ってくるんですよね。しかも靴幅が狭いし。

最近、このページのアクセス数が急増しています。たくさんの声が集まれば、メーカー側に要望する手もあるのかもしれません。


(2018.4.29追加)
Camp4を某楽天ショップで2足注文しました。画面上は在庫あるような表示でしたが、翌日店舗在庫なしの連絡。翌々日にはメーカー在庫なしの連絡とともに、一方的に注文キャンセルされました。

池袋のK山荘、店頭に出展されていますが、展示品のみの在庫。

神保町の老舗Iスポーツに出向き、何とか1足確保。他店舗の在庫もあたってもらいましたが、自分のサイズはありませんでした。各サイズとも1足分の在庫のようです。
ちなみに、Sスポーツはそもそもファイブテンを取り扱っていないようでした。

(2018.5.1追加)
amazon.com(米国)で最後の在庫だった1足を確保。

(2018.7.11追加)
キャラバン社の取り扱いブランドが同社ホームページに掲載されています(2018.7.11閲覧)。

スクリーンショット 2018-07-11 13.25.53.png

いつの間にかKayland(ケイランド)が取り扱いから外れていたんですね。Kayland.comには日本代理店としてキャラバン社が記載されていますが、キャラバン社のホームページには掲載がありません。

キャラバンは2015年頃からケイランドの代理店をしていましたが、取り扱いを廃止するときはしっかりとリリースしてほしいものです。

海外ブランドの国内代理店はけっこう変動があります。安い商品ではないのだから、アフターサービスを考えると本当に困ります。

(2018.9.25追加)
FiveTenの創立者、チャールズ・コール氏が2018年7月、自宅で亡くなりました。まだ63歳という若さでした。

同社を2011年にアディダスに売却してからはビジネスから引退していたようですが、これで私の好きだったCamp Fourの復活の目は完全に絶たれたかなという気がします。

キャラバンは9月から新興のUnparallelの取り扱いを開始。来年から、ファイブテンの後継としていくのでしょう。一方で、この分野では新規参入のミシュランのソールを採用したモデルも各社から出始めています。

世の中は動いています。きっと、もっと良い靴が出てくることを期待しています。

(2018.12.12追加)
キャラバンオンラインストアでのファイブテン商品販売が12月24日(月・祝)で販売終了することがアナウンスされました。

いよいよカウンドダウンです。


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コメント 4

cycle-oyaji

ファイブテンとアディダスの関係を調べていてこのサイトにたどり着きました。
私もファイブテンのアプローチシューズは2005頃のinsightというモデルに始まりMTBツーリングなどに使ってきましたが2013に購入したcamp4が壊れてきたので2016に巣鴨のキャラバン本社でcamp4を試し履きしたら
足型が全く変わっていて履けなくなってしまいました。
2018.6月にたまたま立ち寄ったアウトドアスポーツ店でcamp4を履いてみたら、以前のような足型に戻っていて安心したのですが
2018.12.31でキャラバンが扱わなくなるのと、以降の展望が見えてこないので非常に心配です。
by cycle-oyaji (2018-06-16 12:17) 

ビール隊長

はじめまして。Camp4愛用者の方がいて嬉しいです。
Camp4は無骨で水捌けが良くないという欠点はありますが、軽い、そして全く滑らないという大きな特長がありました。
最近の山用品は靴に限らず、ザックなどもタウンユースを意識したデザインになり、機能性が損なわれているように思います。
ファイブテンの独立性が担保されたとしても、その流れを食い止めることができるのかとい心配があります。
ちなみに、スカルパのテックアッセントが良いという話も聞いたのですが、こちらも廃番。スカルパのアプローチシューズのラインアップもすっかり入れ替わっていました。
購入できるものを確保した上で、今後の展開を気長に待つ、という手しかユーザーにはなさそうです。
新しい情報があればまた追加したいと思います。

by ビール隊長 (2018-06-17 21:03) 

愛用者

はじめまして
私も長らく愛用者でしたが、つい最近同じようにヘタレてきた代替をとおもって探して知って愕然としました。
もともと非常に短いスパンで廃盤を繰り返していたので心配していたのですが、ここまでくるとは。
マイナスポイントを考えても他とくらべてどうしてもステルスをとってきたので本当にどうしたものかと困っています。
アディダスもハイカットは廃盤。それでは100歩ゆずってビブラムとかホカオネオネと考えても欲しいレンジのものはどこも売り切れ在庫なしです。
なんとかならないものでしょうかね・・・

by 愛用者 (2018-07-12 14:25) 

ビール隊長

愛用者さん
愛用品が販売停止になるって、本当に困ったことですね。
自分に合った信頼できる靴が見つかったときの喜びは大きかったのですが、それを失った時の失望も大きいものがあります。登山をやめようか・・・ぐらいのショックがあります。
記事を更新しましたので、憂さ晴らしにお読みください。
by ビール隊長 (2018-07-13 16:55) 

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